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  テーマ101 管理職者として担当部署内で知識を創造していく〜組織の知識創造理論(SECIモデル)から学ぶ管理職者の実務〜
 
 
■世界に一つだけの理論、組織の知識創造理論(SECIモデル)とは
 
一橋大学名誉教授、野中郁次郎氏が1994年に発表した論文に組織の知識創造理論(SECIモデル)という論文があります。
 
 組織は、どうすれば新しい知を生み出すことができるのか、
 そのプロセスを体系的に論じた、
 
 世界に一つだけの理論と言われております。
 
 知識創造理論(SECIモデル)は、
 今、日本で遅れていると問題となっている、
 
 イノベーションへの取り組みに
 多大な示唆を与える理論といわれております。
 
 ■暗黙知と形式知
 
 野中教授は、知識には、
 「暗黙知と形式知」の二つがあると提唱しております。
 
 1.暗黙知
 
 言語・文章・記号などで表現することが難しい、
 主観的、身体的な経験知。
 
 暗黙知は2つに分類することができる。
 
 (1)特定の経験の反復によって「個人の身体に体化されたもの」
 :体が覚えているもの。
 
 (2)「個人そのものに体化されるスキル」
 :信念、信条、直感、ひらめき。
 
 2.形式知
 
 形式知とは「言語化・記号化された知」
 :言語、書物、文書、数式、図表、プログラミング言語など。
 
 
 
■組織内で知識を創造するためのステップSECIモデル)
 
 
 
下記の4つのプロセスを繰り返すことにより、組織は新たな知識を創造し、独自の強みを形成していきます。
 
 1.共同化(Socialization) 暗黙知→暗黙知
 
 「共同化(Socialization)」とは、
 暗黙知から暗黙知が生まれるステップ。
 
 人と人が経験を共有することにより、
 暗黙知が暗黙知のまま伝わることをいいます。
 
 例えば、上司と部下の共同による作業や職人の修行において、
 上司(親方)と部下(弟子)が一緒に作業することにより
 部下や弟子が仕事を覚えることを指します。
 
 部下や弟子が学ぶべきことはマニュアル化されておらず、
 上司や親方の仕事を見よう見まねで覚えます。
 
 2.表出化(Externalization) 暗黙知→形式知
 
 「表出化(Externalization)」とは、
 「共同化」によって得た暗黙知を形式知に変換するステップ。
 
 個人間の暗黙知を対話などを通して、文章や図表などにより、
 目で見られるように集団の形式知に変換することをいいます。
 
 表出化において集団で共有した暗黙知が形式知化されることで、
 集団の知識として発展することができます。
 
 例えば、経験によって得たコツ・ノウハウを、言葉や図で表現し、
 「マニュアルに落とし込む」んだり、
 
 部署のビジョンやコンセプトを文章に落とし込むことをいいます。
 マニュアルや文章を作れば、知識や考えを大勢で共有することが簡単になります。
 
 3.連結化(Combination):形式知→形式知
 
 「連結化(Combination)」とは、
 「表出化」によって変換された形式知を、ほかの形式知と組み合わせるステップ。
 
 形式知同士を組み合わせてひとつの知識体系を作り出すプロセスのことをいいます。
 
 例えば、作成したマニュアルを、ほかの部署・作業グループが作った
 マニュアルと比較検討すると、新たな視点が得られ、
 
 より包括的なマニュアルを作成し、業務効率の向上を図ることができることや
 ビジョンやコンセプトを事業や製品、サービスに
 落とし込むようなプロセスのことを指します。
 
 4.内面化(Internalization) 形式知→暗黙知
 
 「内面化(Internalization)」とは、
 「表出化」「連結化」の過程を経てまとまった形式知が、
 個人的な暗黙知へと変わっていくステップ。
 
 連結化により組織全体で共有された形式知を、
 個人が学習し行動することによって、
 自分の知識となり、暗黙知として個人に内面化されます。
 
 他者の暗黙知や形式知を学習し内面化した個人が、
 再び次の知識創造に関わることで、
 組織に新しい知が拡散していくことになります。
 
 例えば、新しく作ったマニュアルの内容を実践しているうち、
 自分のなかで、新たなコツやノウハウが生まれます。
 この新たな暗黙知は、いずれ「共同化」によってほかの人に伝わることになります。
 
 上記の4つのプロセスを繰り返すことにより、
 組織は新たな知識を創造し、独自の強みを形成していきます。
 
 
 
■話し合う、議論し合う、切磋琢磨し合うことが新たな知を生み出すためには必要
 
各自が持っている知識や技術、アイディア、考え、ノウハウなどをお互いに出し合い、意見をぶつけ合い、
 
 認識し合うことで、各個人が持っている
 知識や技術、アイディア、考え、ノウハウ
 などが組織として、共有されます。
 
 共有化されたものが、文章やマニュアルに落とし込まれ、
 そのマニュアルを各自が実践することにより、
 
 新たな問題点や改善点などが発見でき、
 それをまた、お互いに出し合い、意見をぶつけ合い、
 
 認識し合うことで、より優れた知識や技術、
 アイディア、考え、ノウハウなどが生まれていきます。
 
 実務的には、日々行われる担当部署内における
 打合せの場や報告、相談、連絡の場が非常に重要となります。
 
 打合せの場や報告、相談、連絡の場は、
 新しい付加価値の創造や新しいビジネスチャンス
 発見の場であることを念頭に会話を行うことが必要です。
 
 意見を交わしている間により良いものが生まれ、
 新しい発見や気づきがあることは、誰もが経験していることです。
 
 意見がぶつかり合うと、
 すぐトラブルと感じる管理職者の方もいらっしゃいますが、
 
 トラブルではなく、切磋琢磨していると考え、
 部下にも日頃からそう指導することが必要です。
 
 組織として新しい知を獲得するためには、
 意見を交換し合う場が、必要なことは、
 
 今回ご紹介させて頂いた、
 組織の知識創造理論として実証済みです。
 
 管理職者として自信を持って取り組むことが必要です。
 
 
 
■知の創造のためには、学習により暗黙知を蓄えること
 
 
 
目に見える何かを、部署として生み出していくためには、管理職者の方を含めて目標や想いを持って、
 日夜学習し、暗黙知を蓄えることが必要です。
 
 その場のひらめきや思い付きなども、
 基本は、日頃の学習による蓄積がなせる業ということが、
 知識創造理論からも推察できます。
 
 新しい現実を生み出していくためには、
 目標を持った、意識的、計画的な学習が必要です。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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